日本とインドネシア初の合作映画『KILLERS キラーズ』が公開された。
本作のプロモーションでは、自ら《劇毒エンタテインメント》と呼ぶ、R-18+指定を受けた問題作といえよう。

おそらく、日本では酷評され、一部マニアに受け入れられた珠玉の作品として並べられるような作品であると思われる。
この作品自体を批評するつもりは、ここでは全くないが、ストーリーを簡単に記す。

東京に住む野村(北村一輝)は、女をいたぶった後に殺すというサイコキラー。しかも、殺害映像をインターネットの動画サイトに流すことで快感を得ていた。ジャカルタで町の実力者の不正を追及していたジャーナリストのバユ(オカ・アンタラ)はある日、パソコンで野村の殺人映像を目にする。その画像が脳裏から離れないバユは、やがて自ら暴力の世界へと足を踏み入れていく・・・というもの。

サンダンス映画祭(アメリカの映画祭。ユタ州スキーリゾート地パークシティで、1978年より毎年1月中旬から11日間に渡って開催される)でワールドプレミア上映された際、世界中の熱狂的な映画ファンの度肝を抜いた。
主人公のサイコキラー野村を演じた北村一輝でさえ、「まったく共感も感情移入もできない」と語るほどの容赦ない過激描写が続き、R-18+の指定を受けている。

殺人映像を動画サイトで流すというのも現代の情報化社会への皮肉が込められているが、「特にインドネシアでは、交通事故や殺人事件などテレビニュースで知る前に、動画サイトにアップされて知ることが多い。今の世の中は秘密なんて何もない。人の死も秘密にはならない、ということも示唆している」とジャヤント本作監督は説明する。

予告動画を含め、映画の善悪、表現の方法などに関して言及しないことを、ここで改めていう。

主人公を演じた俳優北村一輝氏は、「アジアで勝負作を撮るというインドネシア映画界の高い志に共鳴した」といい、「我が国でも世界標準の映画を目指すことの重要性を改めて認識した」と語った。

「英語圏のなかで、アジア映画というものの真髄を見せたい」というスタッフの熱い想いを感じ、その勝負のために、『KILLERS/キラーズ』という題材があったのだと認識しているという。

撮影は、東京とジャカルタを舞台に猟奇的殺人に興じるというショッキングな脚本であり、派手で危険なアクションも多く、インドネシア映画では、「前が見えない状態で車の運転をするとか、日本映画ではあり得ない手法が多かった」というが、「とにかく、世界しか見ていない気迫」で出演者もスタッフも一丸になっていたのだという。
既視感ゼロの衝撃映像で、「世界を意識した映画を作る現場」であったという。

ギャレス・エヴァンス:製作総指揮監督
モー・ブラザーズ(ティモ・ジャヤント キモ・スタンボエル):監督
千葉善紀:『冷たい熱帯魚』『凶悪』『KILLERS/キラーズ』プロデューサー

この映画のプロデューサーである日活株式会社プロデューサー千葉善紀氏は、上記にあるように、『冷たい熱帯魚』という問題作を手がけたプロデューサーである。

園子温監督という社会に問題提起を続ける映画監督を起用し、1993年に起こった埼玉愛犬家連続殺人事件をベースとした物語を映画化し、R-18(18歳未満入場禁止)映画に関わらず、報知映画賞・監督賞・最優秀男優賞、ブルーリボン賞・作品賞、東京スポーツ映画大賞・作品賞・監督賞・助演男優賞、毎日映画コンクール男優助演賞、キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞・助演男優賞、ヨコハマ映画祭・監督賞・助演男優賞・助演女優賞、日本アカデミー賞・最優秀助演男優賞等、数多くの映画賞を受賞した。

千葉氏が製作を思い立ったのは、知人から、作品のモチーフとなった実在の連続殺人事件の資料を紹介された時だった。「事件の異様さとドラマチックさ。『これは映画になるな』と思いました」と、すぐに映画化に向けて調整を始めた。

最初の壁は「会社の上層部にどうやって企画を通すか」ということ。
「成人映画のお手本」とも言える同作の製作にゴーサインを出してもらうために、千葉氏は「裏技」を使ったという。
日活で『SUSHI TYPHOON』という海外向けレーベルを立ち上げる際に、そのラインアップの1本に『熱帯魚』を紛れ込ませたのだ。

その映画の企画書ではなく、新しいレーベルという事業の企画全体を通すためのコンテンツの中に組み込んだのだ。

こうした方法と近いビジネスモデルを作り上げる高度なビジネスプロデューサーも日本には存在する。
彼らは、なかなか、表に出てはこないだけなのだ。

コンテンツそのものの企画では、絶対に通らないと思われるものさえ、大きなコンセプトをもつプロジェクトの中の数あるコンテンツの一つとして「一つくらいはずれがあってもいいだろう」という中で、作り手は、大衆に受ける受けないを超え、まだ見ぬものを作ろうと自由に動くことができる。

それが、結果的に、映画賞の数々の受賞に結びつくような、大きな成功をおさめ、コンテンツがプロジェクトそのものを引き上げるという好循環を生むこともあるのだ。

千葉氏は、社内向け試写が終わった後「(上層部に)『オマエ、だましたな』と言われました」と言われ、「でも、面白いじゃないか」という言葉で、「これは、絶対に当てないといけない。結果を出さねばならない」というプレッシャーもあったという。

『冷たい熱帯魚』の公開は当初3館だった。
内容や映像がテレビで流せるものではなかったため、宣伝ができない映画だった。
しかし、当時のSNSブームにも乗り、TwitterやFacebookで、映画ファンが「すごい映画だ!」と、口コミで紹介し、その中に映画好きの著名人もおり、更にそのファンの人に伝わり、ぴあ初日満足度ランキング(ぴあ映画生活調べ)では第2位と好評価を得、北米最大手の興行会社(AMC)により35館以上で北米公開、海外30か所の映画祭で正式招待、北米、イギリス、ドイツ、フランス、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ベルギー、香港など海外での公開がされたのだ。

千葉氏が、今回のインドネシアとの合作を手がけ、世界での映画公開へと結びつけることができたのかは、誌面(画面?)の都合上、BPA MEMBERS(会員限定ページ・閲覧できる読者会員入会案内はこちらから申し込み可能)の会員記事でお知らせしたい。

映画とは、善きにつけ悪しきにつけ、限られた時間の中で監督のもつ世界観をオーディエンスと共有し、カタルシス、喜怒哀楽、思想、感情に揺さぶりをかけ、観た者一人一人に各々の時間を共有した価値を提供する作品を作り上げる役目がある。

一方、ビジネスプロデューサーと同じく映画プロデューサーというのは、その作品をコンテンツとして、どう売り込んでいくのか、どこから投資をして、何を誰に、どれだけのベネフィットを与えることができるのかという影の立役者ともいえる。

普段は見えない場所にいるビジネスプロデューサーの力が、世界を相手に勝負したいという経営者、国内ではシェアが無いとあきらめている経営者にとって、頑張れば活路が見いだせるチャンスとなるだろう。

会員限定ページの「日本映画を世界にプレゼンした男 日活プロデューサー千葉善紀氏」の記事もチェックしてほしい。

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