ビジネスプロデューサー協会会報誌『BPA JAPAN』第9号(2012年10月13日発行)に掲載された記事です。

稲葉瀧文氏(元CBSソニーにて、矢沢永吉・浜田省吾・久保田利伸らを育てた音楽プロデューサー)

これからのビジネスには奥行を持たさねばならない!

戦後、欧米の文化と経済を手本にして日本の近代国家が形成された。
雪舟・尾形光琳・葛飾北斎・世阿弥・岡倉天心・横山大観等に代表されるように、過去、特に江戸時代には、日本独自の成熟した文化が存在し、経済に関しても江戸はもとより各地に才長けた経済学者・思想家が存在していた。鈴木正三・石田梅岩・山片蟠桃・上杉鷹山・本多利明・渋沢栄一等である。
独自の主義主張に外から得たデーターを加え、新しい日本的モードを創り上げて来た代表的日本人である。既にゆるぎない日本の思想と技能が確立していた。

山本七平氏著の「日本資本主義の精神」にこのような一文がある。
「日本では、経済学、経営学は役に立たない」
「戦前の日本を代表する超大出版社の倒産も、すでに四代目を迎えている日本最古の出版社の倒産も見てきた。この象徴的な二大倒産に共通している点は、興味深い事に、その二世と四世が共に戦後早々にアメリカに留学し、経済学、経営学を学び、学んだとおりをそのまま実地に移したという点である。

経営者としては、実際にきわめて有能だが、論争するとすぐに立ち往生する彼は、まさしく日本の超高度成長を支えた経営者の、一つの典型であろう。
それはまた、日本の会社が経済学、経営学とは無関係の「見えざる原則」で動いていることの、一つの証拠でもある。」実に役に立たない経済学と経営学を、日本は後生大事に守り通して来たものである。勿論、この内容は60年前の時代の事ではあるが、現在にも通用する事ではないだろうか。

BPAの来年のテーマが経営論から深化論としているのは、古い経営論を破り捨て、新たな「日本という方法」を深化させながら発見するところにある。アジア近隣諸国の経済発展に追随する事ばかりを考えるのではなく、日本独特の智慧を活かした、新しい産業を早急に組み立てる事が重要である。

松岡正剛は「侘び・数寄・余白」の中で「伝統というと、必ず伝統芸能や伝統技能と言われますよね。たしかにここには能や歌舞伎とともに、陶芸や現代日本画や日本舞踏や雅楽やさまざまな邦楽もありますし、包丁とか竹細工とか和紙技能とか木工技能などがあって、それぞれ生きています。伝統芸能や伝統技能にひそむ方法とは何なのかということを、もう一度しっかりと見ていく必要がある」と述べている。日本のお家芸とされてきた精密な工業製品、高品質な家電商品、自動車、半導体、宇宙工学等の関連部品、それらを生み出してきた日本人の発想を今一度徹底的に学ぶべきである。その深化の先に必ず答えがひそんでいると思うからである。まさしく「温故創新」の世界だ。

「見えないものを見る」のが日本人である。「わび」「さび」「やつし」「あはれ」の発想と「あわせ・きそい・そろい・かさね」の組み合わせから、新たな日本ブランドを作る事が今後の日本再生に繋がると信じている。日本への深化である。

それに「型を守り・型を破って・型から離れる」守・破・離の精神を受け継ぐ事が、これからのビジネスプロデューサーの大きな課題である。

もう平面的に間口を広げる事業はやめにして、狭い間口の中に奥行きを求める事業に専念すべきである。量や価格で競い合うのはこの時代で終わりにしたい。

これからのビジネスを創造する上では、日本独特の芸能・技能を基軸に、「精神産業」というジャンルを考えることもひとつの手である。日本人の木目細やかな目に見えない感性を医療・介護・教育・文化、全般に織り込むべきである。

ビジネスプロデューサーは単なる経営者では無い、文化に精通し柔軟な発想で未来を切り開く勇者として誇りを待たなければならない。
経済や科学の進歩発展が人の暮らしを豊かにし、文化芸能の普及が人の心を豊かにする事を決して忘れてはならない。

未来は進化と深化の時代である。

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