ビジネスプロデューサー協会会報誌『BPA JAPAN』第9号(2012年10月13日発行)に掲載された記事です。

2012 年1 月に開始いたしましたBPA ライブは、第一回のBRAVE「なぜ、勇者は幸運に恵まれるのか」、利他心、オリジナリティ、共に育む「共育」、共創(日本再生)、父性(情熱)、母性(純粋)、戦略と、過去8 回を終え、いよいよBPA ライブのラストのテーマ「調和」に向かいます。

これらの9つのテーマは、停滞した日本経済、閉塞感を感じる社会において、日本を再生するためのビジネスに挑戦する人間の生き様を描いたものです。
テーマに込められた深く重たい真の意味を理解していただくためにも、言葉を尽くすよりも、実際に体感していただくことで、その感性の響き合うことのできる出合いを、可能な限り多くの方と共有したいと願って、2012 年は、ほぼ毎月、多くの方が参加できる形での開催をしてまいりました。

すなわち、BPA ライブは、ビジネスプロデューサーの情報発信メディアであると共に、その生き様に共感、共響し、未来を共有する仲間をみつける目的をもった時間と空間でもありました。

何かを生み出す時、必要不可欠な日本の「間」があるということを、これまでにもお伝えしてまいりました。
それは、伝えるための、そして伝わるまでの「時間」、「空間」、さらに、共に力と心を合わせる「仲間」です。
それは、過去でも未来でもなく、今ここに存在する「間」の中で始めるしかない力と心です。

Vol.5「共創(日本再生)」のテーマで、伊藤理事長の語った「BPA は神話を創る。そこには、シュンペーターの存在を忘れてはならない。」と言われた言葉を覚えていらっしゃるでしょうか。
シュンペーター(1883 年生まれ)は、100 年以上前に、手短にいえば「資本主義は社会主義化する」という未来を予測をしました。
同年代のケインズ(当時はケインズの経済論が脚光を浴び、「総需要を管理すれば、資本主義は崩壊しない」と説きました。
彼らの生まれた年に死んだマルクスは「資本主義は崩壊する」といいました)とは違い、シュンペーターは、「不況はお湿りに過ぎない」と断言し、資本主義の発展過程においては、不況は不可欠の調整プロセスであって、防ぐ手だてを考えるよりも、冷静にその次のステップのために創造的破壊を生み続けることであると問題解決の方法を掲げました。

イノベーション→好況→オーバーシュート現象→破裂→オーバーシュート現象→不況→イノベーション
このサイクルを繰り返すことが資本主義の発展景気循環です。
不況が起きることも不可避である当然のことだと素直に認めることです。
シュンペーターは、世界恐慌でさえ、複数の景気循環サイクルが、たまたま一致した偶然の不幸だと主張しました。
潮の満ち引きと同じように、寄せては返す自然界の循環によって、世界が成り立っているのと同じく、経済もまた、好不況の循環が起きて当然であり、そこに慌てふためくのではなく、次の循環を回すためにも、ひたすらにイノベーションを生み出し続けることが最良の解決策といえるのではないでしょうか。

シュンペーターは著書『資本主義・社会主義・民主主義』の中で、資本主義の発展は、いずれ、大企業による寡占化状態(少数の供給者が市場を支配することで新規参入が困難になり、価格競争や技術競争、サービス競争が起き難くなること。

供給者は安定的な利益を確保できる一方、消費者の利益はなおざりになる危険がある)を招き、不完全競争に陥るといいました。
それにより、企業家の意欲衰退が起こり、イノベーションは生まれず、とりあえずの満足な富と豊かな生活を手にいれた大衆は、自分達の現生活水準維持に走り、少子化が進むようになると予測しました。

豊かな社会によって、学問を学ぶ大衆が増え、多くの知識人を生み出す一方、やがて彼らは批評家集団となり、政治的な力や発言権をもち、自己中心的な合理主義者があちこちで現れ、ロマン主義的な挑戦心を認めようとしなくなると言ったのです。

そして、優雅なる衰退の時代が訪れ、やがて資本主義は崩壊し、社会主義の時代がやってくると予測しました。
今の日本を冷静な目でみつめてください。
イギリスをはじめヨーロッパも日本も、まさに、シュンペーターの預言が当てはまります。
とりあえずの満足で、発展を願わない大衆の存在は、利己主義の塊であり、循環を滞らせていきます。
また、成熟した企業は、挑戦者やイノベーターの起こす変化を恐れ、官僚主義的な自己保身に身を翻しています。

BPA ライブVol.1 のテーマ「勇者」から言い続けてきた、このイノベーションの担い手として資本主義発展の原動力となるのが、企業者(アントレプレナー)=ビジネスプロデューサーの存在です。
それは、単なる会社経営者をいうのではありません。
常に新しい結合(イノベーション)を生み出し、そこから新しい突然変異が創造されることによって、結果的に旧態然を破壊し、内部から経済構造を革命化することができるのです。

この破壊的創造(creative innovation ) を担うのがビジネスプロデューサーなのです。
BPA では、創り上げたビジネスは売る!手放すことを潔しとする!と言います。
それは、創業者であっても、経営の主体であっても、破壊的創造を止めてしまえば、最早、シュンペーターのいうアントレプレナーでもなく、BBPAのいうビジネスプロデューサーでもないからです。

なぜならば、イノベーションを常に繰り返しても、小企業から大企業、巨大企業の時代へと移行する中で、企業経営や企業者の機能は日常化し、イノベーションまでもが日常化し、新たな価値を生み出すためのイノベーションではなく、イノベーションそのものが、日常業務化してしまうからです。

つまり、成功に依って大企業化した組織は、必死に市場に最適化するために、生き残り戦略を進化させ、天才的閃きや冒険心よりも、合理化や自動化されたシステムに乗っかり、決定権も集団意思に左右されるようになります。
ナポレオンという英雄が失脚したように、一人の天才的英雄によって、企業精神、先見性や独創性、決断力や実行力に依って牽引してきた魅力溢れる革新的企業も、巨大組織化することで官僚化し、冒険・挑戦となる新たな市場への参入を恐れるようになるのです。

2013 年BPA は、経営論で固められた世間一般の社会経済の進化論から、破壊的創造を生み出す深化の時代に邁進してまいります。
2012 年の開始以来、BPA では、ビジネスプロデューサーを以下のように定義しております。

「ビジネスの世界で、今、求められている人財。それがビジネスプロデューサーである。
 既成概念を打破する発想力。異なる価値観や才能あふれる専門分野の人たちを有機的に関係づけ調整する指導者。
 価値あるビジネス創造を使命とし、現在、閉塞し問題に満ちている社会の歪みをビジネスチャンスに変える誇り高き勇者である。
すなわち、次代を切り拓く才幹あるリーダーを、ビジネスプロデューサーと呼ぶのである。」

資本主義の本質とは、環境の変化によって影響を受けるのではありません。
ビジネスプロデューサーが、絶えざるイノベーションを興し、それを社会に訴えかけていくことで需要は沸き起こってくるのです。

常に既存の出来上がったものからの受け身ではなく、ビジネスプロデューサー自身の内的な変化によって発生するエネルギーが、市場を創造していく源泉となるのです。
シュンペーターのいうイノベーションは、需要者側のニーズから生じるものではなく、あくまで供給者側がイニシアティブを握って創り出すものでした。

新結合は、旧結合で使われていた生産手段を奪い取ることで発展するというように、先に過去を否定したりぶっ潰したりするといった過激な行動(革命)ではなく、過去を敬いながらも、新たな発想によって生み出されるイノベーション(新結合)が始まることで、結果的に旧態の生産手段の組み合わせが破壊され、そこに、さらに新たな異分子の要素が組合われることによって、従来にはないまったく考えもつかないような斬新な組み合わせが創られる…それが「創造的破壊」-innovation なのです。

シュンペーターの五つのイノベーションは以下の通りです。

・新しい商品の創出
・新しい生産方法の開発
・新しい市場の開拓
・原材料の新しい供給源の開拓
・新しい組織の実現

教養のない政治家などがよく言う「ただ壊して新しいことを始めればいい」という意味ではなく、既存にはあり得なかった組み合わせによる新たな創造があってはじめて、その結果、既存の構造が破壊されることで、新しい価値観を生み出すことをいいます。

つまり、最初に「創造ありき」なのです。
この創造ありき「破壊的創造」イノベーションを創り出すのがビジネスプロデューサーです。

ビジネスプロデューサーは、かならずしも経営者ではありません。
新しい試みに挑戦する勇者、利他的な野心に満ちた挑戦を厭わない人。
さらに、一般大衆がマスメディアの情報に流される方向とはまったく異なる方向に進むことで独自のオリジナリティを発揮し、どんな障害にも負けないだけの情熱を持ち続け、多くの可能性と才能を引き出し、育て、自分をも成長させる、しかも、論理的に物事を正確に認めた上で解決策を打ち出し、純粋に日本再生、世界再生、宇宙規模の思想までをもつことのできる人間です。

経営者のうちこの条件を満たす人をビジネスプロデューサーと呼んでいます。
シュンペーターによれば、イノベーションに向かう動機は、「私的帝国への意欲」「勝利者意欲」「創造する喜び」であり、彼のいう「企業家(アントレプレナー)」には「深い洞察力」「精神的な自由」「挫折に耐え抜く強い意志」といった資質が求められることを説いています。

BPA では、2013 年より、活動方針をほんもののビジネスプロデューサーの養成に注力してまいります。
そのために、自分で立つ勇気ある勇者のビジネスプランを精査し、BPA ライブはビジネスモデルの発表の場として非公開
で行います。そのための必要な学びのサポートもしてまいります。
また、年に2 回は、日本再生につながるビジネスモデルの発表の場として、大きな会場での一般公開ライブを予定しております。

これら、個々の能力を引き出すための研究会や勉強会を立ち上げ、そこで、共に育み、共に行動する仲間を集めることができます。そこでは、門戸を広げて、各専門分野の才能を自由に伸ばせる環境作りによって、今の日本の社会で生まれにくくなった新しい発想を生み出す空間が可能になると考えております。

ここで、シュンペーターの話に戻します。
シュンペーターは、「リスクの担い手としての銀行家」の存在の重要性を説いています。
企業家(アントレプレナー)は、野心と創造性を持っている必要はあっても、生産手段(場所・ヒト・カネ)をあらかじめ持っている必要はないと主張しました。
利益の蓄積だけでは、イノベーションに必要な投資額は充足しないと考えたからです。
従って、企業家を見極め、資金を提供する役割が不可欠となります。
ここに「銀行家」の役割が生まれます。

最後のリスクの担い手となって信用を創造し、可能性のある企業家に生産手段を仲介することで、「交換経済の監督者」と命名された役割を銀行家は担う必要が出てくるのです。

BPA の伊藤理事長が繰り返し言う「出来上がったプロジェクトは手放す潔さをもて」という言葉の意味は、ここにあります。
社会は、経済は、独占されるものではありません。
人のからだが、血液、臓器、筋肉といった細胞の集まりによって、人体外の空気中の酸素を取り込み、口から食物を取り込み、多くの作業によって、生命が循環するように、社会も経済も循環し続けるためには、様々な事象、感情、物質、あらゆるもののギリギリの均衡を保つことで、すべてが回り、それが循環という調和を生じさせているのです。

シュンペーターは、100 年後の未来を予測し、解決策を模索し遺しました。
それは、神話につながる物語でもあります。
BPA は、さらに、社会も経済もスピードの加速した100 年後の世界を予測しつつ、今の解決策、そして、未来の解決策を、共に創り上げる仲間たちが集まり、本気で生きた証を残す神話を創り上げていきたいと思います。

未来は見えないけれど、未来は存在している!
それを信じる人々と共に、今の変化を、自分の変化を恐れず、変わることを恐れない人を生み出す場を、皆様と共に創り上げていきたいと思います。
(小幡万里子)

(注)イノベーションの語源は、英語のinnovationである。1911 年に、オーストリア出身の経済学者シュンペーターによって、著書『経済発展の理論』において、初めて上記のように定義された。
英語innovation は、動詞innovate「革新する」「刷新する」に名詞語尾-ation がついたもので、innovate はラテン語の動詞innovare 「リニューアルする」の完了分詞形innovatus「リニューアルされたもの」から来ている。innovare は、さらにin-(「内部へ」の方向を示す接頭辞)と動詞 novare 「新しくする」に分解される。動詞 novare は形容詞の novus「新しい」から来ている。innovation という語自体の用例は1440 年からある。
日本で使われている「技術革新」という意味ではtechnical innovation あるいはtechnological innovation という。

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