ビジネスプロデューサー協会会報誌『BPA JAPAN』第5号(2012年6月30日発行)の巻頭インタビューに掲載された記事です。

科学者の目をもつ文学者・・・そんな言葉が私の頭に浮かびました。

プロフィール
1949年7月7日、岡山県玉野市生まれ
慶應義塾大学工学部卒業、同大学院修士課程修了。
日本原子力研究所研究員を経て、カリフォルニア大学に留学。
帰国後、学習塾を経営しつつ、作家業をこなす。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。

受賞作
1979年 日本原子力学会技術賞受賞
1990年 『帰国』 第24回北日本文学賞受賞
1994年 『メルトダウン』 第1回小説現代推理新人賞受賞
1999年 『イントゥルーダー』 第16回サントリーミステリー大賞受賞(大賞・読者賞をダブル受賞)
2006年 井植文化賞受賞
2007年 『ミッドナイトイーグル』 映画化(松竹映画、ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンによる共同製作)
2010年 『風をつかまえて』 第56回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高等学校の部)に選定
(敬称は略させていただきます)

小幡:高嶋さんは、日本原子力研究所にお勤めされていらしたのですよね。子どもの頃から、ずっと理系タイプだったのですか?

高嶋:そうですね。本は、ほとんど読まない子どもでしたね。(笑)
ただ、小学校四年生の時の先生が面白い方で、授業中なのに、図書室に連れて行ってくれてね。本棚に並んだ本を順番にはじめから読ませてくれたんですね。本や文学に触れたっていうのは、その時くらいでした。
中学校は遊んでばかりだったし、岡山の田舎のごくごく普通の高校に通う高校生だったので、受験のためにサマリー(要約本)くらいしか読んでいなかったなあ。

小幡:そんな高嶋さんが、どうして作家になられたのでしょう。

高嶋:日本原子力研究所で核融合の研究を3年していました。それまで、努力すれば、なんでもできる!と思っていたのだけれど、アメリカ留学中に色んなすごい人に出会って、自分の頭は彼らの頭脳には、絶対にかなわないって気づいたんです。(笑)
努力で超えられない壁があるんだって。自分はこんなに頭が悪かったのかって。(笑)それで、これから食べていくために、どうしようかなあって思った時に、たまたま、自分の周囲に作家志望の友人が多かったんですね。それで、彼らが書くものを読んでいると、こっちの方が自分に向いているんじゃないか、それに楽じゃないか、って思い始めたんですよね。(笑)

小幡:そうだったんですか。それで、すぐに書き始めたんですか?

高嶋:帰国してから、まず学習塾をやり始めました。今も、教育には生涯関わっていきたいと思っているんです。実は最初に本になったのは『アメリカの学校生活』『カリフォルニアのあかねちゃん』という、アメリカの学校教育のことを書いたものなんです。

小幡:すごい!意外です。高嶋さんが塾で教えていらしたなんて。やっぱり教えるのは理系だったのですか?

高嶋:塾は、一人で全部を教えていました。小学生から高校生まで全教科をオールマイティに。学年を超えて80人くらいを教えていた時期もありました。けっこう楽しかったですよ。

小幡:全部って大変じゃなかったですか?

– 教えることが得意 –

高嶋:僕は教えることが得意なんですよ。(笑)アメリカにいる時は、あさひ学園という日本人学校で教えていました。

小幡:今の日本の学校教育については、高嶋さんの思うところってありますか?

高嶋:塾をやっていた時に痛感したのは、子どもたちには本音で話せる場や人が必要だってことです。
子どもは塾にいる時は、公教育の場とは違う面を見せるんですね。
現在、講演会で呼ばれる分野は「防災」「原子力」「教育」「作家」という内容に大きく分けられるのですが、高校生などに講演する時には、「無理をするな」って言います。「人間、どうしても出来ないことがある。
僕がサッカー選手になるのは、どんなに頑張ったって無理だ。無駄な努力で時間を使わないで、自分に一番向いていること、できれば楽しみながらやれることをやった方がいい。それを見つける手助けをするのが教育だ」って話します。
そして、自分の中の埋もれている才能をみつけるためには、自分が死ぬほど何かをやってみて見つけるもんだ、って言います。はっきり言ってしまうと、子どもと会って、頭がいいか悪いかなんて、2~3時間話せば分かるんですよ。(笑)
今後大切なのは、大阪市長の橋下さんのようにシステム中心にいじるだけでなく、教育の中身を変えていくことだと思います。

子供には勉強がすごく好きだという子も、死ぬほど嫌いだという子もいます。
日本ではほぼ100%の子どもが高校に行きます。
でも、本当の高校の学力をつけて卒業する子どもがどれだけいるでしょうか。義務教育をもっと充実させ、その先は子どもたちがやりたいことをやれる学校を増やしていけばいい。
それには、大学にいくことも、介護、ものづくり、農業、漁業など、どれも等しく重要だと思える社会をつくることです。
そして、どの職業についても十分生活出来る収入が得られる社会システムを作ることです。頭がいい、運動神経がいい、優しい、気が効く、手先が器用、力が強い、すべて同様に素晴らしい才能です。

[nextpage title=”ビジョンをもつヒーローたち”]

– ビジョンをもつヒーローたち –

小幡:高嶋さんの作品の主人公は、まさにビジネスプロデューサーと重なります。多くの幸福のために、自らがビジョンを持ち続けるヒーローが描かれていますね。それは、高嶋さんの中にもあるものなのでしょうね。

高嶋:自分に無いからこそ、意識しないで出てくるのかもしれません。無い物ねだりなんです。(笑)書くものも、いつも自分の興味から生まれます。僕
は、個人の殺人事件などよりも、大きな社会の動きや、人がどうあるべきかということにすごく興味があります。

小幡:やっぱり高嶋さんはビジネスプロデューサーだと思います。『首都感染』とか『タナボタ!』という政治や社会をテーマに書かれた作品をみても、
「こういうリーダーがほしい!」って思っちゃいます。高嶋さんにもBPA LIVEでプレゼンしていただきたいです!

高嶋:こんな僕でよければ、いつでも呼んでください。

小幡:ありがとうございます。高嶋さんは、やっぱりビジネスプロデューサーマインドを秘めていらっしゃいます。ぜひ、BPAの皆様に、おすすめのご著
書をご紹介ください。

高嶋:『命の遺伝子』という本がありまして、これは中国の南京大学出版会から中国語でも出版されているのですが、純粋な日本人は一人も登場せず、舞台も日本じゃありません。日系の天才科学者が主人公で、ユダヤ、バチカン、ナチス、万能細胞、クローン、テロメラーゼといったキーワードが出てきます。
スピルバーグ監督でハリウッド映画にしてもらいたいなあといつも思ってるんですが、これを理解してくれる日本人は、なかなかいません。(笑)ぜひ、
BPAで実現してもらいたいですね。

小幡:素晴らしい宿題をいただきました。(笑)狭い視野ではできない仕事ですね。大きくグローバルな目と頭脳をもった仲間で実現していきたいと思います。ありがとうございました。

高嶋:ありがとうございます。

高嶋さんは、原子力研究所時代、核融合の研究をされておりました。今、原発問題が社会で取り沙汰されておりますが、高嶋さんは「電気新聞」の連載を控え、さらに科学について深い考察をされております。

「未来を考えてって言葉を皆さんが言いますが、永遠の未来を考えることは可能でしょうか?
300年前、日本が江戸時代であった頃、その時代の人が、今生きている我々のことを考えていたでしょうか?
こんな時代になるとは、まったく予想していなかったでしょう。
我々が考えることのできる未来は、せいぜい数百年です。300年後の科学は、今、生きている人間が予想できるような科学を超えていると思っています。原子力でいえば、高レベル放射性廃棄物さえも、300年後の科学では利用できるものに変わっているかもしれません。原子力などは日本だけの問題として見るのではなく、もっと世界レベルで考えていかねばならないと思います。
人口が日本の10倍ある中国の人々も、日本人と同じ生活水準を求める権利がある。それには10倍のエネルギーが必要です。ベトナムも10年で10基の原発を計画しています。
福島で起きたことは本当に残念なことだと思います。日本は、これだけ世界に影響を与える大事故を起こしてしまった。この事故の教訓を世界と共有して、二度と同様の事故を起こさないことを今後の日本の使命としていかなければなりません。
ただ福島の復興が遅れているのは、先のことを考え過ぎて、前に進むことを躊躇わせていることもあると思います。今生きている時代にできることを考え、精一杯にやり、後は未来に生きる人間たちに委ねるという考えも有りだと思います。」

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– インタビューを終えて・・・ –

高嶋さんは「無理のない生きかた」という言葉を、よく口にされます。数々くの連載を抱えながら、書き下ろしや、取材、講演、また私生活ではご両親の介護など、その精力的な活動と多忙な生活に「無理のない」と言える姿勢に頭の下がる思いがしました。
高嶋さんの小説に描かれる主人公は、とても男らしく潔く、そして一本の筋と誠のあるキャラクターです。まさにビジネスプロデューサーの鑑のように、その情熱と誠と冷静で客観的な思考で、社会を解決していく男たちの生きざまを知ることができます。

取材後にビジネスのお話をさせていただき、高嶋さんのビジネスセンスに驚かされました。
すでに日本の出版業界に囚われるのではなく、世界のエンタテインメントを視野にいれたグローバルな作品作りをされており、普通の日本人作家とは目線が違っていることを感じました。
何作かは、すでに英語でのサマリーを作成してあり、英語圏での出版企画や、またそのプロットを基に新たなコンテンツビジネスとして売り出すことも可能なまでの状態に用意されております。
また、特にビジネスプロデューサーの皆様に、ぜひ読んでいただきたいと言われる『命の遺伝子』は、純粋な日本人は出てきません。舞台も日本ではなく、当初からハリウッド映画を意識した作品になっています。日本人作家の中で、こうした思考で小説を書く作家は数少ないのではないでしょうか。

2007年に映画化された『ミッドナイト・イーグル』は防衛庁が全面協力で、主演大沢たかおさん、竹内結子さん、玉木宏さん、吉田栄作さんという錚々たるキャストで日米同時公開をされました。これもまた、舞台をアメリカや韓国などに変えても、世界共通で受け入れられる小説素材となっております。高嶋さんは、いくらでもお好きに料理して、世界のあらゆるところに届けてほしいと言われます。

小説家というのは、自分の作品に固執して、それを別のコンテンツで使用されることを嫌い、印税のために図書館で本を借りないでください!と、自分の都合や生活だけを声高に主張人もいます。しかし、主とした使用法がビジネスとして厳しければ、それを他の分野のものと組み合わせて、新たな価値を創り、新しいビジネスにつなげていこう!という思考の変換ができる人が、これからのビジネスの成功を生み出すことになるのではないでしょうか。
そして、それが、まさしくビジネスプロデューサーと呼べるのでしょう。

高嶋さんのお話を伺って、文学はまさにビジネスの宝庫でもあり、また、高嶋さんの強みは、その科学者としての揺らぎない未来への信頼があればこその理論と思想であるということを感じました。

たくさんのご著書があり、すべてをご紹介することはできませんが、ぜひ、ご興味ある本を手に取っていただきたいと思います。
高嶋さんが原子力研究所で3年間、研究された核融合について、皆様にわかりやすい解説をお届けいたします。
現在の科学の進歩と、核エネルギーについて知り、そうした知識と理解のもとに、マスコミ等の情報操作ではない自分なりの思想を培って行動していくきっかけになっていただきたいと思います。

―核分裂と核融合について-

現在の原子力発電に利用されている核分裂とは、重い原子に刺激を与えることで分裂を起こしエネルギーを生み出します。核分裂には一定の法則があり、ウラン分裂では、Rb(ルビジウム)とCs(セシウム)になります。このときに発生するエネルギー(熱)が水を沸かし、その水蒸気によって水車のようなタービンを回して発電するのが今の原子力(核分裂)発電です。発電に使用できる熱量を発生させるためには、1回の核分裂では無理で、何回も連続して核融合反応を起こす必要があります。
対して、今後の発電として注目され、21世紀後半の実用化に向け、世界で研究されている博融合があります。核融合の一番わかりやすいモデルは太陽で
しょう。核融合反応は、軽い原子を勢いよくぶつけ融合させることによってエネルギーを生み出します。一番起こりやすい反応が、重水素と三重水素による反応ですが、融合が難しく、その解決が核融合研究の課題です。発電のためには連続反応が必要になります。核融合を起こすために使ったエネルギーより、出てくるエネルギーが大きくないと発電には使えません。そのために施設は現在、大がかりなものが必要です。しかし、核融合は資源は海水利用であり、使用済み燃料問題の解決についても核分裂のように果てしない時間は不必要です。科学の世界では、次世代エネルギーについて真剣に考え、すでに動きが始まっているのです。

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著書紹介

『命の遺伝子』(講談社)
永遠の若さが手に入るとき、歴史の闇から陰謀が浮上する。
ネオナチの集会で爆破事件が発生。
遺留品のなかにナチの大物戦犯と一致する手首があった。しかしそれは一見、四十代の肌に見えた。日系の天才遺伝子科学者トオル・アキツはベルリンで講演直後に拉致され、百歳を超えるはずの手首の謎の解明のため、アマゾンへ。壮大な科学冒険小説。細胞の老化は防げるのか? 世界各地に驚異的に長命の人々が点在するという。生命をつかさどるものは何か?テロメア、テロメラーゼ、ES細胞、クローン…古今東西人々が求めつづけた不老不死とは―天才日系科学者を主人公にドイツ、アメリカ、アマゾン、ヴァチカンと壮大なスケールで描くダイナミックなノンストップ冒険小説。

『首都感染』(講談社)
東京を封鎖せよ!
20××年、中国でサッカー・ワールドカップが開催された。しかし、熱狂するスタジアムから遠く離れた雲南省で、致死率60%の強毒性新型インフルエンザが出現。
中国当局による必死の封じ込めも破綻し、恐怖のウイルスが世界に、そして日本へと向かった。
インフルエンザ・パンデミック(世界的大流行)阻止のため、政府対策本部のアドバイザー・元WHOの優司は空港での検疫を徹底させるが、ついに都内にも患者が発生。
総理の瀬戸崎は空前絶後の“東京封鎖作戦”を決断した。

– SNSのつながりの力 –

高嶋哲夫氏との出会いは、SNSの世界。twitterという140字に自分のつぶやきを発信するツールがあります。その140字の文字から言葉を共感し合ったことから、ネット上でのコミュニケーションが始まりました。

新型インフルエンザの脅威をマスコミは流行モノのように騒ぎ立てていました。
「国も政府もしっかりと敵を知って予防と対策を考えたらいいのに。ぼくの本を読んでもらいたい。」という高嶋氏のつぶやきと、「不安を煽り立てて、現実問題の解決を提案しないマスコミに踊らされることなく、自分自身で考え選択することが今、求められている。」とつぶやいた私の言葉と言葉がつながった瞬間でした。

人と人というのは、合うことが大切ではないかと思います。高嶋氏の描く作品の主人公には、覚悟を感じます。
国民を地球を救うために、自分の身を粉にしても尽くす!それこそが人間として美しい生き方であると示唆してくれています。
この思いをもつ人々が集まり、力に変われば、世界の中の日本も大きく変化します。
イノベーションとは社会に変化を起こすこと。
高嶋氏の作品は、ビジネスプロデューサーにとって、たくさんのヒントを与えてくれる作品ばかりです。(小幡万里子)

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